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矢木沢 壬生−2−
菁「ほら、荷物」
壬生「あ、はい……」
壬生から荷物を預かると、それをサイドバッグにつめてかわりにヘルメットを渡す。
壬生「……???」
壬生は渡されたヘルメットを手にしてジッと眺めていたが、とりあえず頭の上にチョコンと乗せてみた。
菁「ちゃんとストラップしなきゃダメだよ。ほら、顎上げて」
壬生「えっと?」
菁「上向け上、上向いてウーって言ってみ?」
壬生「……うーー……」
菁「……プッ……」
壬生「な、なんで笑うんです?」
まるで子供のシャツのボタンを留めてやってるみたいだ。
あぁ、そう言えば、壬生の服装、いつもの服装だな……せめてズボンぐらい穿かせるべきだったか?
コケる様な運転はしないけど、こうもヒラヒラした服だと風でバタついて疲れるし、スカートがチェーンに巻き込まれたらアウトだな……。
菁「んじゃ、乗って」
壬生「はい……」
俺は折り畳まれていたタンデムステップを出すと、後部座席をポンポンと手で叩く。
車外の薄っぺらいシートなので、低くて乗りやすいけど長時間乗ってるとケツが悲鳴を上げる、休憩は早めに入れることにしよう。
壬生はタンデムシートをジッと見つめたまま、なにか考え込むような表情をしていたが、結局は意を決したかのように、スカートのまま足を開いてシートをまたぐ。
壬生の体重を受け止め、リアの2本のサスペンションがギシリと音を立てて沈み込んだ。
壬生「乗りました」
菁「ん、お、おう……」
思わず声が上擦った。
それもそのはず、なぜなら、壬生の両腕は俺のわき腹を回ってギッッと抱きついてきているのだ。
当然俺の背中には壬生の半端ないパイオツがモニョンと押し付けられている。
や、柔らけぇ……これぞ2ケツの醍醐味って奴か?
男同士で2ケツする時は、当然抱き合ったりなんかしない、後ろの奴はタンデムバーにつかまって、前の奴に必要以上に触れないように乗る。
だが、相手が女の子なら話は別だ。
コーちゃん、コレが目的でアップハンドルに交換してるのか?
低いハンドルのオートバイだとこうはいかない。
前に一度、セパレートハンドル仕様の時に、菘奈を後ろに乗せたことがあったが、俺の上体が伏せてしまう分、あの時は全然オッパイを楽しめなかった。
あまりにもオッパイが触れないので、ムカついて急ブレーキをかけて菘奈のオッパイを強制的に楽しもうとしたが……。
オッパイが触れるより先に、菘奈のヘルメットが俺の後頭部を直撃した。
(人体の構造上、胸より先に頭がぶつかるのは当然なんだが)
その点、いま入っているアップハンドルなら、運転者の上体が起きる分、後ろの奴も抱きつきやすい。
グッジョブだぜ、コーちゃん。
壬生「……菁くん?」
菁「ん、あぁ、いま出るよ」
俺はギアを1速に落とすと、ゆっくりと走り出した。
壬生「菁くん! ところで何処へ向かうんですか?」
菁「あー、とりあえず海! 海に行こうと思ってる!」
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